書斎への憧れと雰囲気作り

読書家にとって憧れるもの。何でも取り揃えた図書館や、お洒落なカフェが併設された書店など、年齢や性別、嗜好などで求めるものは異なると思いますが、男性ならオーダーメイド家具を置いた自分だけの書斎に憧れを抱いたことはないでしょうか。

ドラマや映画などで寡黙な父親が書斎に篭って読書に耽ったり、手記を綴ったりするシーンなんかを見て、こんな部屋が欲しいと思ったものです。

 

それほどスペースのない部屋に所狭しと並べられた本棚に、上品な机と椅子。証明は煌々としているのではなく、間接照明がぼんやりと灯っているような部屋で、時間を気にせず好きな作品をじっくり読むことができたらそれは幸せな時間です。

私は読書をすることも好きですが、文庫本を収集することも好きです。
好きな作家の作品を五十音順に並べるのか、それとも発表された順に並べるのか悩みながら本棚に収納しているので、もし自分の書斎を持てたならそこは読書をするだけの部屋ではなく、私だけのコレクションを展示する部屋にもなるでしょう。

 

居間のソファに座ってでも、寝る前の布団の中でも読書は読書で同じですし、どこで読んでも本の内容に違いはありません。それはもちろん書斎も同じです。

こんな風に言えば中身のない浅い人間のように思われますが、大切なのは雰囲気だと思います。

我々は常に時間に急かされて暮らしており、余程時間を持て余している人でなければ、それが例え休日だったとしても、趣味の時間でさえ家事や翌日の仕事の準備などに追われています。

なので「今は時間を忘れて読書に耽りたい」という望みを叶えてくれるのが書斎だと思います。

時計やカレンダー、携帯電話など全てを排除して好きなだけ読書に没頭できる、そんな雰囲気を作り出してくれるのが書斎という部屋だと私は思っています。

 

学生時代に仲の良かった友人の家には実際に書斎がありました。
もちろん友人の父が使っていた部屋で、家族でも簡単に立ち入れぬ雰囲気があるそうなので部外者である私など、ちらりと中の様子を伺うこともおこがましい話です。

友人の父とは何度か会ったことがあり、挨拶や世間話もしたことがあります。

その方はとても穏やかで、たくさん本を読んでいるからか、言葉遣いが丁寧で端々に気品すら感じられました。失礼ですが外見はとても紳士的とは言えませんが、雰囲気は紳士そのもので私が書斎に憧れを持ったエピソードの一つとして、今も記憶されています。

偶然かもしれませんが、場所や雰囲気が人間を育むのかもしれません。
だとしたら、書斎は持てなくとも部屋に本棚をたくさん並べるなど、雰囲気を作り出すことは大切なことと言えるでしょう。