語りかける背表紙

2010年、「電子書籍元年」といわれて以来、デジタル時代における紙の本のあり方が問われている。しかしこの6年一向に紙の本この世から姿を消す、なんて様子は当分なさそうだ。紙の本はそれ自体、「あたたかみ」や、「手触り」以前に、電子書籍にはない価値を持っている。それは「本棚に並べる」こと。

私たちは自身のために本を読んでいるのは勿論だが、どこかそれを自慢したいという見栄が読書のストイックさと共存している。そうして、私たちは相容れない気持ちを抱えながら、本棚に本を並べる。

そんな気持ちだから、ときには「読もうと思って買った」が、まだ読んでない哲学の本まで並べてしまう自分がいる。それもわざわざ目線のあたりに。で、来客があって「どんな本?」と聞かれたらきまって、「読んだけど、どんなだったかなあ?」なんてごまかしたりして。

本棚に並んだ本たちは、そんな小さな見栄っ張りを見透かしたように、だまって背表紙を我々に向けている。そんなことだから時々背表紙と目が合うと、少しばつが悪いような気持ちになる本も、まあ少なくない。

本と持ちつ持たれつの付き合いをしているような気分になるのは、本と本棚と、「寡黙で雄弁」な背表紙のおかげだろう。